宮城県内で静態保存されていた鉄道車両のうち同型機が8両も存在したC58形蒸気機関車でしたが、2025年4月時点では2両のみとなっています。そのうちの1両である114号機(地元での愛称は「シゴハチさん」)について紹介します。
▲2025年4月16日現在の「シゴハチ」さん。桜が満開となりどこか誇らしげ。
1939年:汽車製造大阪工場で落成(製造番号:1964)新製配置:奈良機関区
1949年:仙台機関区より小牛田機関区へ。主に陸羽東線で僚機ともに活躍する。
1973年:動力近代化に伴い引退後、岩出山城址・城山公園にて静態保存
2020年~:管理を行う大崎市より、市内に保存される3両のC58形蒸気機関車を全て解体する方針が示されるが、保存を求める地元住民が活動を行った結果、一転して114号機の静態保存継続が決定する。
2024年:クラウドファンディングが行われ目標金額を大幅に上回る支援が集まる。
2024年秋~:本格的な修繕作業を開始し、「雪囲い」も実施される。
2025年4月12日:修繕の完了を祝う式典「城山汽車まつり 」が開催される。
蒸気暖房管は主に旧型客車にスチームを送り込んで暖房とするための設備で、かつての仙山線では黎明期の交流電気機関車に暖房設備(蒸気発生装置)が無く、C58が暖房車の代わりとして連結されていた事もありました。(交流電気機関車が故障した際はそのまま救援機になったとの逸話も)
テンダー(炭水車)側を先頭にするバック状態で客車を牽引する際、暖房を供給する必要がある場合は配管を前方まで延ばしてくる必要があります。
キャブの下から出てきた配管は非公式側のランボード横を通る所まではどのC58でも同様なのですが、114号機はデフのところからランボードの下へ入ってゆくのでスッキリしています。
連結器脇の公式側に客車とのホースが繋がるジョイントが設けられることから、
かつて大崎市内に保存されていた19号機や356号機では配管がそのままデフの横を通っており、カマによってその仕上がりは異なっています。
▲114号機のランボード周り。蒸気暖房管があることで非公式側のランボード側面は殆ど見えなくなっている。
▲嵩上げされた炭庫は、キャブとの干渉を避けるために一部が切り欠かれている。若干切り口がデコボコしているのはご愛嬌。
テンダーの炭庫を嵩上げするために設けられた約1cm厚の鉄板は、側面・キャブ側とも同じ高さで設けられるのが一般的です。
しかし、C58 114号機の場合はキャブの屋根と重なる所だけ切り欠かれており、この機体固有のポイントとなっております。
切り欠かれた理由・時期については不明であるものの、嵩上げを実施した後にキャブの屋根と干渉することが分かり急遽当該部分を切除したものであると推測されます。
(写真は修繕作業時に撮影しています。通常は立入禁止の場所です)
キャブに入ると、水面計カバーに残る「L(R)C五八 一一四」という漢数字の刻印を確認する事が出来ます。写真には写っていませんが左右を表すL・Rの刻印がある事から、ボイラーまわりの検査で分解した際に左右を取り違えないよう工夫が凝らされていたことになります。
磨き出しを行うことでこの水面計カバーが真鍮製である事が判明し、この刻印は先端が鋭利な金属(千枚通しのようなもの)で刻まれた事が分かり、製造時ではなく検査を行う工場や機関庫において刻まれた事も推測することができます。
なお、キャブ内は通常立ち入ることが出来ませんので、基本的に修繕・清掃作業を行う時などのみとなっています。(写真は修繕作業時に撮影しています。通常は立入禁止の場所です)
▲機関士席(左)側の水面計カバーに残る刻印。
・・・大崎市からの管理委託を受けてC58 114号機の管理を行っている団体のWebサイトです。
・・・2025年4月の「城山汽車まつり」に至る紹介記事、映像もありとてもわかり易くまとまっています。